この記事の内容
アニュアルレポートって何?
アニュアルレポートを直接翻訳すると「年次報告書」です。
アニュアルレポートは上場企業が年次決算のときに発行する報告書で、決算対象年度の会社の活動内容が含まれています。
アニュアルレポートは、主に株主向けに財務成績に関する情報を提供することを目的としていますが、それ以外の関係者にも会社の活動を報告する目的で使われます。
なぜ面白いのか?
なぜアニュアルレポートが面白いという記事を書いたか。
パッと見るとこれって何も面白くないのです。社長やCEOからのメッセージがあり、各事業の活動内容があり、あとは財務諸表がついている。
それだけ見ると何も面白くないですね(笑)。
実は、よく書かれているアニュアルレポートはその会社の戦略が透けて見えるのです。
この「透けて見える」がポイントで、そのまま戦略が書いてあるわけではありません。
中には戦略を記載しているアニュアルレポートもありますが、そこには戦略上の重要な情報が載っていないことの方が多いです。
この戦略が透けて見える、言わば「戦略チラリズム」が面白いポイントになります。
どこの会社のアニュアルレポートが面白いのか?
いきなり残念なお知らせです。
日本の会社のアニュアルレポートには面白いものはありません!
理由はシンプルで株主がヌルいからです。
ヌルい株主とやり取りする企業のアニュアルレポートはヌルくなります。
日本には株主資本市場が育っていません。
だからアニュアルレポートの内容もお遊戯っぽいものになります。
読んで面白いのはタフな株主とやりあっている米国企業ですね。
特に米国の市場全体に影響するような代表銘柄のアニュアルレポートは徹頭徹尾緊張感が漂います。
筆者の一番のお気に入りアニュアルレポートはIBMです。
どういう風に読むのか?
まずは「株主への手紙(Letter to Sharholders)」に注目します。
IBMの場合には「A Letter from the Chairman」となっていますね。
いくつか引用しながらどう読むのか見ていきましょう。
But the most challenging and complex work of these digital transformations still lies ahead. We call this work “Chapter 2,” in which our clients modernize and move their mission-critical workloads to the cloud, and infuse AI deep into the decision-making workflows of their business.
しかしデジタルトランスフォーメーションの中で最もチャレンジングかつ複雑な仕事はまだこれからです。私どもはこの仕事を「Chapter 2」と呼びますが、お客様がミッションクリティカル業務を近代化してクラウドに移行させ、ビジネス上の意思決定ワークフローにAIを深く取り込んでいきます
https://www.ibm.com/annualreport/2019/letter.html
上記文面から2つのことがわかります。
- デジタルトランスフォーメーションにおいて現在はChapter 1と呼ばれる領域にいる
- IBMはChapterという呼称を使ってデジタルトランスフォーメーションの全体工程表を準備している
そう。IBMはデジタルトランスフォーメーションを自分から動かしていこうとしていて、そのマップを自分で描き、顧客企業をその手のひらの上で転がそうとしているという光景が見えてきます。
加えて、何を重要指標としているのかも見えてきます。
これらの指標を見ることによって「IBMの現場はこの数字を追いかけているのか」ということがわかります。
それぞれのビジネスにおいて注力するポイントが異なるので興味深いですね。
全てが財務指標だけではないというところが面白いです。
最後に
アニュアルレポートは誰にでも手に入れられる資料ですが、そこに込められたメッセージを読み解くことは誰にでもできるものではありません。
しかしアニュアルレポートを通じて一流経営者の思想にアクセスできたなら面白いと思いませんか。
皆さんも是非試してください。
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