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川上の産業における需要予測精度は常に問題
サプライチェーンが多層に連なる産業において供給能力や在庫は非常に頭の痛い問題です。
最終需要の状況が見えにくいために需要情報の反映に時間差が発生し、その時間差にさらに生産リードタイムが加わります。
結果として最終需要が更新されてから部材の供給に反映されるまでに時間を要し、川上に行けば行くほど在庫が過多になってしまうか供給不足になってしまうかという事象、いわゆる「ブルウィップ効果」が見られます。
そのため、材料メーカー・川上産業においてはどのようにして需要予測を行うかがとても大きな課題となります。
特に需要下降期においてタイムラグが発生
特に川上、原材料に近いところになればなるほど、最終需要の動きが見えづらく、サプライチェーン上の各メーカーは原料供給を確保したいために需要数値の保守的な調整を行います。
たとえば、あるテレビの型式の需要が落ちてきた場合、本来は液晶のような原材料の発注量も減らすべきですが、再度需要が増えたときに原材料が不足すると商機を失います。
このため需要減退期においては、需要のそのような減少傾向が川上の業界には反映されず、ギリギリのタイミングでの発注キャンセルは需要変更が行われます。
そのため川上業界側では在庫がより蓄積しやすく、財務的な影響も結果として大きくなります。
構造的に需要予測の精度向上は不可能
この問題に対応するために、材料メーカー各社は需要予測精度を高めようとしています。
具体的には各種統計情報を総合的に組み合わせようとする、エンドユーザーまで行って需要状況を確認するなど、様々な取組をしているところが多いのです。
しかしながら、そのような取組が実際に奏効するかと問われればそうではありません。
いかに多面的な情報を得たとしても、それが時間差を埋められるかと言えば、現在の日常的な情報スピードから考えればあまり差があるとは言えません。
むしろ一般的な情報が透明であることを前提に、各社が在庫や発注をコントロールした結果が現状ですので、そこから何か付加的に改善できることは無いのです。
有効な手段は2つ: リスクを取って判断するか合従連衡
であれば、どうすれば良いのか。
筆者が思うに有効な手段としては2つです。
- リスクをとって経営判断
- 合従連衡によって交渉優位に立つ
1つ目の手段は、情報精度が上がらないのであれば、あとは経験と勘と度胸に頼ると言うものです。
「何をバカなことを」
と思われるのは重々承知していますが、客観的な情報に頼ろうとすればするほどブルウィップ効果、すなわちサプライチェーンを遡った際の情報の振幅の餌食になります。
それなら客観的な情報に頼らない判断を行うというのがここで言いたいことです。
少なくとも情報を頼りにして振幅の波に飲まれてしまうよりはましでしょう。
2つ目の手段は、在庫や欠品のリスクに対して商取引条件を変えることで臨むというものです。
リスクが発現することを前提に、そのリスクを顧客あるいはサプライチェーンの川下に転嫁するという考え方です。
「お客様は神様です」
という考え方が定着している日本においてはこの発想はなじまないと思います。
それを比較的容易にするためには、合従連衡によって少しでも交渉上の優位に立つことです。
顧客側の産業に比べてサプライヤー側の産業が分散しているようでは交渉は難しいでしょう。
これが集合することによって顧客側産業よりも交渉上優位に立ち、需要と供給の振幅によるリスクを商取引条件の変更によって転嫁するというのがこの手段になります。
最後に
昨今、様々な自然災害や事故によって製造業のサプライチェーン上の供給リスクが喧しく問題提起されています。
このリスクの回避のために需要予測の精度を高めるといった施策に飛びつく企業も多いのですが、一歩引いた目で本当にそれが問題の解決につながるのか考えていただきたいと思います。
皆さんにとって何かしらの参考になれば幸いです。
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