組織を変えれば本当に上手く行くのか – 経営問題の本質に迫るために

経営戦略
Gerd AltmannによるPixabayからの画像

問題があるとすぐに組織を変えたがる

多くの企業では経営上の問題やいわゆる仕事のやりにくさをすぐに「組織の問題」として位置づける傾向が強いです。

特に従業員同士で集まってグチを言い合う場合には必ずと言って良いほと組織の問題を指摘することがあると思います。

そしてそのような問題への対処法として組織変更することを頻繁に行う企業が多いこともまた事実と思います。

しかしそれらの問題の原因あるいは対処法が果たして本当に組織なのでしょうか?

個人が出せるアウトプットは簡単に変わらない

言うまでもなく組織とは人の集合体であり、その最小構成要素は人です。

組織が出すアウトプットはそこに所属する個人のアウトプットの集合体です。

個人のアウトプット能力は時間をかければそれこそ変化していきますが、突然昨日から今日に大きく変化するものではありません。

したがって、その集合体である組織のアウトプット全体もまた本来は組織変更によって極端に変化するものではありません。

したがって、組織変更によって解消される問題は特定の限られた範囲の問題ということになり、組織変更自体が万能薬として機能するわけではありません。

組織変更が有効に機能する範囲は限られているのに施策として組織変更に頼るということが頻繁にみられます。

戦略があっての組織

「組織は戦略に従う」(チャンドラー)という言葉と「戦略は組織に従う」(アンゾフ)という言葉があります。

一度にこの言葉を見ると混乱してしまいそうですが、実はこれら2つの言葉は背反しているわけではなく、比較的近いことを言っています。

「組織は戦略に従う」の方は、組織設計は戦略をベースに行うべきという基本原則を述べたものです。すなわち先に定めるべきは戦略であり、それに基づいて組織設計があるべきということです。

他方、「戦略は組織に従う」の方は制約条件を述べています。すなわち、戦略上採択できる選択肢は組織によって規定されるという意味です。

いずれにせよ、組織変更を行うのであれば、まず戦略がどうあるべきなのかに注目すべきです。これが出来ていないのに組織変更を行うのであればそれは愚の骨頂。

組織を変えて問題が解決するか – それは問題が理解できているかどうか

ここまで述べてきたように組織変更は万能薬ではなく、戦略が定まっていてこそその有効性が判定できるような代物です。

すなわち、経営上の問題が何であるかについて理解していなければ組織変更が機能するかどうかはわからないのです。

なぜ組織変更を多用するのか

にもかかわらず多くの経営者やマネジメントが組織変更を経営上の施策として多用するにはいくつか理由があります。

経営者が組織変更を多用する理由
  • 多くの人にとって変化が見えやすい: 組織が変わるということは日常的にビジブルな変化です。多くの従業員にとって「何かを変えようとしている」ということが伝達しやすくなります。
  • 施策としての即効性がある: 戦略の策定や導入というアクションは準備作業も含めると時間がかかる作業になりますが、組織変更に関しては短ければそれこそ数日でできてしまいます。
  • みずからの権力を顕示しやすい: マネジメントとして自らが組織内にてパワーを持っているということを示しやすくなります。

しかしながら、これらの要素や独善的・副次的なものであり、本質的な問題解決方法とは言えません。

ですので、本当に何を変えたいのかについてしっかりと見据えた議論が必要です。

最後に

組織変更はマネジメントにとって導入しやすい変化であり、中毒性があります。

だからこそその使用は慎重になるべきです。

本質の課題を捉えて、それに即したアクションを実行していただきたいものです。

皆さんにとって何かしらの参考になれば幸いです。

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