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パンデミックの中で失われたオフィスライフの楽しみ
「パンデミックの中でどのように幸福を追求すべきか」これは職場だけでなく様々なコミュニティで課題になりつつあります。
在宅勤務やオンライン学習に伴うメンタルヘルスへの影響について記述した記事も多く見られるようになりました。
職場が予定を常に合わせた上でのオンライン会議に変わったことで、いわゆるセレンディピティすなわち偶然の出会いがなくなりました。
多くの人にとって、廊下で同僚から「ありがとうございました」と言われたり、プレゼンテーションの後で上司から「よくやった」と言われたりすることは、オフィスライフのハイライトでした。
今では、これらは昭和時代の伝統のように思えます。
同僚とのウォーターサーバーでのやりとりや、カジュアルなランチ、コーヒーブレイクがなければ、以前のように社会的なつながりを持つ機会はありません。
このような機会がないと、仕事に喜びを見出すことがはるかに難しくなります。
では、どうしたらいいのでしょうか?
一つの提案は「親切」です。
この1年、ほとんどの経営に関するアドバイスは、パンデミックの間も生産性を維持する方法に集中していましたが、親切の力はほとんど見落とされていました。
褒めたり、認めたりすることで親切を実践することは、リモートワークを変える力があります。
親切の価値
親切にすることは、多くのメリットがあります。
第一に、おそらく最も明らかなことは、親切にすることが同僚にとって非常に役立つということです。
職場で認められることは、従業員の燃え尽き症候群や欠勤を減らし、従業員の幸福度を向上させることが、ギャラップ社が米国の労働者を対象に行った調査で、毎年明らかになっています。
褒められたり、評価されたり、賞賛されたりすると、個人の気持ちが充実し、自尊心が高まり、自己評価が向上し、ポジティブな感情が引き起こされることが、何十年にもわたる研究で明らかになっています。
このような褒め言葉によってポジティブな結果が得られることは、直感的に理解できます。
褒めることは、本来持っている自分自身に対する肯定的な側面と一致し、自分の価値を確認することになります。
第二に、親切にすることで、人生をより有意義にできます。
例えば、人のためにお金を使ったり、時間を割いてボランティア活動をしたりすることで、幸福感や人生の意義を感じられるようになるという研究結果があります。
親切にすることは、自分よりも大きなものに投資することになり、それには意味があると感じます。
親切にすることは、他人が私たちをどのように見ているか、つまり私たちの評価を向上させるとともに、私たちが自分自身をどのように見ているかの両方の見方を形成することにつながります。
私たちは、自分の行動を観察することで、自分がどのような人間であるかを推測します。
そして、親切な行為は、私たちが良い人間になるために必要なものを持っていると信じさせるのです。一緒に喜ぶ瞬間を持つことが難しいリモートワークでは、親切な行為が長期的な仕事の満足度につながる重要なメリットになるかもしれません。
第三に、今回の研究では、褒められるよりも褒めるほうが幸せになれることがわかりました。
私たちは、参加者をペアにして、自分のことを書いてもらい、その後、お互いに自分のことを話してもらいました。
次に、片方の参加者には、相手の話を聞いた後で、相手の好きなところや尊敬できるところを素直に褒めてもらいました。
一貫して、褒められるよりも褒めるほうが嬉しいという結果が出ました。
しかし、意外なことに、人々は親切にすることで得られる快楽的なメリットをほとんど認識していませんでした。
褒めるとなぜこんなにも幸福感が増すのか?
パンデミックの間、私たちに欠けていた幸福感の重要な要素である「社会的つながり」が関係しています。
私たちの研究では、褒め言葉を贈ることで、相手に注目するようになるため、褒められるよりも社会的なつながりを強く感じることがわかりました。
褒められることはとても嬉しいことですが、思いやりのある本物の褒め言葉を言うには、相手のことを考えなければなりません。
相手の精神状態、行動、性格、考え、感情などです。
相手のことを考えることは、多くの場合、相手とのつながりを感じるための前提条件となります。
このように、褒め言葉は社会的な潤滑剤となり、人間関係のつながりやポジティブさを高め、私たちをより幸せにしてくれるのです。
それにもかかわらず、人は褒めることを躊躇しがちです。なぜでしょう?
最近の研究によると、誰かに近づいて何か良いことを言うことは、不安にさせたりや不快感を引き起こす可能性があります。
そのため、人は褒められると不快に感じたり、悩んだりするものだと思い込んでいますが、実際にはその逆です。
このような心理的な障壁に加えて、遠隔地で働くということは、思いがけない親切心や褒め言葉、表彰などを行う上で構造的な障壁にもなっています。
パンデミック以前は、組織は公式なプログラムで従業員を評価していましたが、偶然の出会いがあれば、簡単に感謝の言葉や賞賛の言葉が生まれました。
一方、最近のZoomミーティングでは、厳格なアジェンダに沿って行われることが多く、褒め言葉はおろか、他の話題を話す余裕もありません。
積極的に親切さを育むことは、組織にとってもメリットがあります。
親切にすることが当たり前になっている職場では、その波及効果は急速に拡大します。
調査によると、人々は親切な行為を受けると、そのお返しをします。
しかも、同じ人だけでなく、全く新しい人にすることも多いのです。
これが、組織の中に寛大な文化をもたらすのです。
3,500以上のビジネスユニットと50,000人以上の個人を対象にした画期的な研究では、礼儀作法、助け合い、褒め合いなどの行動が、組織の中核的な目標と関連していることがわかりました。
これらの行動の割合が高いほど、生産性、効率性、離職率の低下が予測されました。
リーダーと従業員がお互いに親切に行動することで、コラボレーションとイノベーションの文化が促進されます。
親切を仕事に取り入れる
リーダーはどのようにしてリモートワークでの親切を促進できるでしょうか?
第一に、リーダーが模範を示すことです。
人は本来、ステータスの高いチームメンバーの行動に敏感です。
従業員を褒めたり、賞賛したりすることで、リーダーはチームメンバーに自分の行動を真似るように動機づけ、チーム内に親切の規範を作り出すことができます。
第二に、リーダーはズームミーティングの中で、チームメンバーがお互いの仕事を認め合う「親切ラウンド」の時間を設けることができます。
これにはそれほど時間をかける必要はなく、週に数分でも十分です。
しかし、数ヶ月に及ぶプロジェクトのほとんどがZoomで完結する場合は特に、この数分で士気と社会的つながりを高めることができます。
3つ目は、小さなスポットボーナスを検討することです。
Googleなどの企業では、「ピア・ボーナス」制度を導入しています。
これは、特に効果的な仕事に対する感謝の気持ちを表すために、組織内の基金から少額のお金を社員同士で送り合うというものです。
人は小さな親切にも大きな親切と同じくらい感謝するという調査結果があります。
また、ギフトカードや小さな贈り物を郵送するのもよいでしょう。
感謝されていることを知るだけで、親切の心理的効果を引き出すことができ、組織に多額の費用をかける必要はありません。
親切さは、オンライン化が進むソーシャルワールドの弊害を軽減することができます。
親切さの力は、人々の間でつながり、職場の文化を変えていくことができる、不可欠なリーダーシップスキルです。
最後に
オンラインでのつながりが支配的なコロナ禍以降の世の中においては、以前のオフィスで得られた自己肯定感を補完するための何かが必要です。
親切さはオフィスライフの収縮に伴って発生した自己肯定感の欠落を補い、エンゲージメント感を高めるためのツールとして重要な役割を果たすと考えます。
皆さんにとって何かしらの参考になれば幸いです。
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