「中国はアメリカに勝てない」 – 記事からの考察

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ニューズウィーク記事: 「中国はアメリカに勝てない」ジョセフ・ナイ教授が警告

ニューズウィークの記事に

「中国はアメリカに勝てない」ジョセフ・ナイ教授が警告

というものがあり、内容が興味深いので紹介したいと思います。

ジョセフ・ナイ教授は

アメリカ合衆国の国際政治学者。ハーバード大学特別功労教授。アメリカ民主党政権でしばしば政府高官を務め、ジャパン・ハンドラーとしても知られる。

Wikipediaより

という方で、日本の政治事情にも詳しく、対日政策の発言も過去になんどかされています。

結論としては中国が勝つかアメリカが勝つかの判断は時期尚早というもので、日本語記事のタイトルのように「勝てない」というのはちょっと言いすぎかなと思います。

ナイ教授の論点: ソフトパワーとハードパワー

ナイ教授がこの二大強国を比較する論点は下記の通りです。

中国とアメリカの比較の論点
  • ソフト・パワー: その国の評判や魅力
  • ハード・パワー: 経済力や軍事力

特にこのハードパワーにいくつかの要素があるのがポイントです。

  • 地政学: 「アメリカは太平洋と大西洋、そして友好的な隣国に囲まれているが、中国はブルネイ、インド、インドネシア、日本、マレーシア、フィリピン、台湾、ベトナムなどの近隣諸国との間に領有権・海洋権益争いを抱えている。」
  • エネルギー: 「シェール革命のおかげで、アメリカはエネルギー輸入国から純輸出国に転じた。これに対して中国のエネルギー調達は、今も輸入に大きく依存している。」
  • 人口動態: 「スタンフォード大学長寿研究センターのアデル・ヘイユティン人口動態分析部長によると、今後15 年でアメリカの労働力人口は5%増加するが、中国はマイナス9%の減少となるだろう。長く続いた一人っ子政策のために、中国の生産年齢人口は15年にピークを迎え、総人口でも近くインドに追い抜かれる見込みだ。」
  • 科学技術: 「バイオ技術やナノ技術、情報技術といった重要分野でもアメリカの優位は明白だ。」

米国のリスクは移民政策

そのハードパワーにおいてアメリカが一方的に優位にある状況ながら、トランプ大統領の政策によってソフトパワーが毀損するするリスクがあるというのがナイ教授のポイントです。

「幅広い同盟関係や国際機関への関与といった「エース」を捨てる行為は、そうした間違いの1つだ。」

「厳格過ぎる移民制限も間違いだ。」

興味深いのは下記の引用です。

筆者は昔、シンガポールの建国の父リー・クアンユーに、近い将来、中国がアメリカに代わって世界の大国の地位に就くと思うか質問した。リーは「ノー」と答え、その理由として、アメリカには全世界から有能な人材を引き寄せ、多様性と独創性に昇華させる力があると指摘した。一方、中国には強力な漢族ナショナリズムがあるため、このような開放性を確保するのは難しいだろう。

「中国はアメリカに勝てない」ジョセフ・ナイ教授が警告

そしてナイ教授の警告はこのように結ばれています。

アメリカが今と同じ政策を取り続ければ、ナショナリスト的なポピュリズムと権威主義への傾斜が一段と加速するだろう。

「中国はアメリカに勝てない」ジョセフ・ナイ教授が警告

すなわち、基本的にアメリカ優位の構造は変わらないが、トランプの政策によってそれが中国に逆転されるリスクを伴うというのがこの記事の主張です。

最後に

コロナ禍からの復帰という意味では中国は真っ先に本格的な経済活動再開を果たしました。

一方、アメリカは依然として感染者の増加、その地域の拡大に苦慮しています。

この状況から、中国が優位になるのかという声が多く聞かれるようですが、専門家の見地からすればコロナにかかわらずアメリカ優位の状況は変わらず、むしろコロナよりもトランプ大統領がアメリカの優位性を脅かすリスクの震源地であるということのようです。

皆さんにとって何かしらの参考になれば幸いです。

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