災害直後の生産現場における復旧確認手順 – 短期的なBCPについて

事業運営
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規則正しく動く工場も災害時には非日常状態となる

地震・集中豪雨・台風など、日本は非常に災害が多い国と言えるでしょう。

これらの災害は予知することが困難で、その災害に直面した場合には突然非日常状態へと入ります。

工場はそのオペレーションを最適化するためにどれだけ定常状態を安定的に作れるか、すなわち常にある前提を元に安定的なオペレーションを組み上げることを志向します。

一方、災害に襲われた場合には、突然非日常状態に入るわけですから、そのオペレーションの前提が全て崩れてしまいます。

非日常への備えを行っておくのがBCP

そのような非日常状態に対する備え・計画を作っておくのがBCP(Business Continuity Planning)です。

BCPとはテロや災害、システム障害など危機的状況下に置かれた場合でも、重要な業務が継続できる方策を用意し、生き延びられるようにしておくための計画。

野村総合研究所 https://www.nri.com/jp/knowledge/glossary/lst/alphabet/bcp

BCPについては復旧手順や最低限守るべき業務レベル等を規定しておくものですが、場合によっては抽象度が高すぎて現場での作業手順には使えないこともあります。

それでは災害が起こった場合には工場の現場ではどのような手順で動けば良いのでしょうか。

ポイントは混乱の中でも規則正しく優先順位を守ること

工場の現場における災害時のBCPあるいは復旧手順に必要なことは

規則正しく優先順位を守ること

にあります。

具体的には

  1. 生産を支えるインフラをどのように整えていくか
  2. 生産業務フローをどのように戻していくか

が重要と考えています。

インフラの優先順位は1. 従業員 2. ライフライン 3. 生産設備

まず生産インフラに関して最も優先して、かつ圧倒的優先順位で確認しなければならないのはオペレーターやご家族の人命です。

まず人間がいなければ工場は動きません。それは無人化された工場であったとしても同じことです。

工場が災害によって被災したということは従業員の方の自宅も高い確率で何かしらの被害が出ていることが想定されます。

まずはその被害状況の確認、特に人命です。

もし従業員に何か大きな被害があった場合にはその復旧を優先させましょう。

続いて、従業員の方の安全、無事が確保された場合には続いて工場のライフラインです。

ライフラインというと抽象的ですが、水道や電気、場合によっては動力用の燃料などです。

工場の被災の状況やその地域全体の被災状況によってはライフラインがダメージを受けている場合があります。

ライフラインの復旧なくしては生産を再開することは難しいでしょう。

ですので、その復旧に専念することになります。

場合によっては電力会社や水道局や地方自治体に対して工場のライフライン復旧の優先度を高めてもらうことを交渉することも必要でしょう。

ライフラインの復旧の目処が立ってきたら、続いて生産設備の確認です。

災害被災によって設備が故障したり不具合が出る可能性があります。

各設備の状況がどのようになっているか仔細に点検することが必要です。

点検自体についてはライフライン、特に電力の復旧ができていなければ不可能な場合があります。

だからこそ、ライフラインの確認は生産設備の前に来るのです。

このようにしてインフラ確保に関しては1. 従業員 2. ライフライン 3. 生産設備の順で確認をしていきます。

生産再開の優先順位は1. 完成品 2. 仕掛り品 3. 原材料 4. 生産開始

上記のインフラ面が確認できたら続いて生産再開に向けての作業です。

まず最初に行うべきは完成品の保全と出荷です。

それは完成品が生産ラインを流れるものの中で最も付加価値が高いからです。

まずは完成品が二次災害の被害に合わないように確保・保全をし、可能であれば早急に出荷して被災地から遠ざけましょう。

続いて仕掛品です。完全に生産インフラが復旧しているのであれば仕掛品を流動させて完成品にまで持っていくのですが、例えば地震などの災害の場合には余震の頻度が多い場合には慌てて流動させるべきではありません。

まだ仕掛品を流すことが難しい場合には一旦保全をして生産ラインから隔離して様子を見ましょう。

そして原材料ですが、最も付加価値が低いとは言うもののこれがなければ物は作れません。

二次災害の影響を受けないようにしっかり確保・保全を行っておきましょう。

最後に上記の完成品、仕掛品、原材料が確保されたなら仕掛品はラインに流さずに原材料を最初から流すようにしましょう。

場合によっては生産設備に不具合がある可能性があり、せっかく問題無く作成できている仕掛品を無駄にしてしまう可能性があります。

最初から通しで品質に問題無く生産ができることを確認できてから、保全してある仕掛品も流すようにしましょう。

日常時から備えがあれば非日常時も怖くない

工場にとって災害発生は非日常ですが、日頃から対応方法への備えがあれば怖くありません。

このような災害への備えは企業としてのマネジメント力を問われます。

是非生産現場も含めたBCPの策定をしていただければと思います。

最後に

筆者は2016年の熊本震災の際に担当する事業の生産工場が大きく被災し、事業運営に際して非常に苦労しました。

特にそのころは世界的に需要が強い時期でもあったので製品供給の面で大変苦労したことを今でも記憶しています。

BCPの考え方自体はそれほど複雑なものではないですが、対応するチームの中で同じイメージを持って行動できるかどうかが非常に難しいと感じました。

日頃からシミュレーションを行い、主要関係者でイメージを共有しておくことをお薦めします。

皆さんにとって何かしら参考になれば幸いです。

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