この記事の内容
IMDは世界有数のビジネススクール
IMDというビジネススクールをご存知でしょうか。
ビジネススクールとは
経営学および関連した科目を教える学部から大学院レベルの高等教育機関
Wikipediaより
のことを指します。
IMD(International Institute for Management Development)はスイスのローザンヌに拠点を置くビジネススクールで、常にビジネススクールランキングのトップクラスに名前が挙がる有名校です。
IMDの教授がCOVID-19後の戦略策定を指南
IMDの教授であるCyril Bouquet教授とMarc Gruber教授がCOVID-19後すなわちポストコロナ・コロナ後の戦略づくりのあり方について指南するセミナーを開催しました。
特にこの不確実性の高い事業環境において、その変化をどのように活用するかという点に着目したセミナーとなっています。
また、リーマンショックとの対比からもこの戦略にどのような意味があるのかという点についても言及しています。
それでは筆者が気になった点についてエッセンスを抜き出してみたいと思います。
コロナ後は今とは違う世界
教授はコロナ後はこれまでとは全く異なる事業環境になるため、いままでと同じことを継続しているだけではいけないと警鐘を鳴らします。
いままでと同じことを続けているのは下記の画像のように竜巻の前で芝刈りを続けているようなものだという例えで示しています。
特に今回のCOVID-19による経済の落ち込みは世界大恐慌以来最大のものであることが既にコンセンサスとなっています。
すなわちリーマンショックを超える経済の落ち込みに対して我々は備えなければなりません。
不況はチャンスに – リーマンショックからの教訓
一方で、このCOVID-19・新型コロナによる事業環境の変化は恐怖だけなのかというとそうではありません。
例えば、リーマンショックの際に研究開発費への投資を増額できた企業は同じ期間に研究開発費を増額できなかった企業と比べて、その後の利益率の成長において圧倒的に差をつけることができているというデータがあります。
このように不況がやってくる際にどのような打ち手を打つかによってその後の回復期において大きな差を生み出すのです。
グリーン・スマート・フェアが今後の世界の合言葉
不況の中でも積極的に投資をすれば良いということがわかっても、問題はどの分野に対して投資を行えば良いかということです。
IMFのKristalina GeorgievaはCOVID-19を”Great Reset”すなわち「すばらしいリセット」の機会と捉えて、今後の世界はよりグリーンでスマートでフェアな世の中へと向かうというメッセージを発しています。
確かにロックダウン(都市封鎖)や在宅勤務(テレワーク)の進展に伴って自動車での移動が現象し、皮肉にもより環境に優しい世の中になりました。
またこの「非接触文化」によってデジタル・クラウド・バーチャルに物事を解決していく仕組が一気に加速しています。
さらに、テクノロジーは全ての人に均等に機会をもたらします。
経済の落ち込み、不況自体は好ましいニュースではありませんが、コロナを機によりよい世の中への進化が加速されると言えるのではないでしょうか。
問題はどのように投資をすれば良いか
さらに難しい問題は「どのように投資を決定するか」です。
教授は投資領域として3つの選択肢を挙げています。
- コア事業の強化: コスト削減・顧客体験の改善
- コア事業のシフト: 顧客ニーズの変化に伴いコア事業の範囲をずらす
- コア事業の外へ成長: コア事業とは異なる領域に成長を求める
これらの3つの選択肢の中で志向すべきは3つ目の選択肢、すなわち「コア事業の外へ成長」です。
これだけ経済や世の中が激しく変化するのですから、コア事業がいつまでも安泰であると考えるのは危険です。
コア事業の外へ成長する際に考えるべきはやはりテクノロジーです。
85%の企業経営者がコロナ後の事業機会としてテクノロジーセクターを挙げています。
しかしながら一方でテクノロジー領域への投資について自信があると回答する経営者は21%に過ぎず、自信がないと答える経営者が多いのも事実です。
テクノロジーによって付加価値は一気に高まる
ここでテクノロジー領域への投資の自信の一助となるような情報を提供したいと思います。
例えば、将来の成長が期待できる技術の生産コスト(価格)がどれくらい大きく変化してきたかという情報です。
下記の表を見ていただけるとわかるのですが、数々の先進的な技術が初期にどれくらいのコストがかかっていて、現在ではどれくらいのコストで調達できるかを示したものです。
例えば、ドローンの場合2007年時点では10万ドル=1,000万円以上かかっていたものが、現在では100ドル=1万円程度となっており、この10年ほどの間に1000倍もの付加価値効果になっていることがわかります。
このようにテクノロジー領域が与える付加価値効果は非常に大きく従来型の産業とは大きく様相が異なるのです。
テクノロジーは付加価値そのものを再定義する
上記ではテクノロジーによる付加価値の量的変化を議論しましたが、テクノロジーは質的変化ももたらします。
例えば、スマートウォッチの登場によって時計や医療機器へと進化を遂げました。
Uberは需要と供給をマッチングさせる技術を応用することによって、タクシー配車からフードデリバリー(Uber Eats)、さらには観光業(Uber Wine)にまで進出しようとしています。
コロナ後の戦略策定のあり方
コロナ後は事業環境が根本的に変化する可能性があり、それに対応するためには現在の事業領域から離れたところにも投資をすることを考える必要があります。
その投資対象として有力なものとしては、その付加価値の質的・量的変化の大きさからテクノロジー領域が面白いのではないかという話をしました。
それらを踏まえた上で、実際に投資領域を考えるに際しては、まず産業にとらわれずに自社がどのような能力・スキルを有しているかを列挙しましょう。
それを産業の区切りとは異なる基軸で事業定義していくのです。
その考え方として教授は下記の表にある「ARENA」という事業定義の考え方を示しています。
これは単一産業とは違うくくりで事業を再定義する視点の持ち方です。
例えば、単一産業であれば「業界何位」とか「マーケットシェア」といった考え方が重要ですが、ARENAの考え方では「どれくらい事業領域を拡大できるか」「事業機会のうちどこまで取り込めるか」といった要素を意識します。
このように産業領域が動いていく前提においては事業領域を「動かす」ことを前提とした考え方が必要です。
最後に
コロナ前もそうでしたが、コロナ後においては更に不確実性の高い世の中が訪れるでしょう。
そのような不確実な世の中に対応していくためにはそのための考え方のフレームワークが必要です。
皆さんにとって何かしらの参考になれば幸いです。
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