中国と米国のAI知財における戦い – 世界知的所有権機関の視点

グローバル
Hans BraxmeierによるPixabayからの画像

WIPOが人工知能(AI)の知的財産に関するレポートを発行

WIPOという機関の名前をご存知でしょうか。

World Intellectual Property Organizationの略称で、世界中の知的財産権と取りまとめを行っている機関です。

このWIPOが2019年に人工知能(AI)に関する知財レポートを発行しました。

WIPO Technology Trends 2019: Artificial Intelligence

このレポートには人工知能技術のトレンドが網羅的に記述されており、非常に興味深い内容なので、それについて紹介したいと思います。

AIと一言で言ってもその領域は多岐にわたる

人工知能=AIと言っても多数の領域があります。

その構造は下記のようになっています。

ファジィ論理
論理プログラミング 一般
記述ロジスティクス
エキスパートシステム
確率論理
概念体系工学
機械学習一般
教師あり学習
教師なし学習
強化学習
マルチタスク学習
決定木学習
サポートベクターマシン
ニューラルネットワーク
深層学習
論理関係性学習
確率グラフィカルモデル
規則学習
インスタンスベース学習
潜在表現
バイオインスパイアードアプローチ

このように圧倒的に機械学習の領域に研究の詳細化が集中しています。

実際にレポートによればAIに関して申請された特許のうちの89%が機械学習に関するものです。

人工知能知財保有トップ20機関に日本勢が11社

レポートによれば最も人工知能領域の特許を有しているのはIBM社、続いてマイクロソフト社です。

人工知能領域の特許トップ20社のうちに日本企業は実に11社もあります。

  • 東芝
  • NEC
  • 富士通
  • 日立製作所
  • パナソニック
  • キヤノン
  • ソニー
  • トヨタ自動車
  • NTT
  • 三菱電機
  • リコー

意外にも日本企業が強いことがわかりますね。

トップ500申請機関のうち中国の機関が20%以上

他方、人工知能に関する特許を申請している世界中のトップ500機関のうち、中国の機関は20%以上を占めます。

中国の中からいかに多数の機関が人工知能の研究に参加しているかということがよくわかると思います。

第2位の米国が機関の数で5%に満たないことを考えると中国では人工知能の研究への参画がより一般化しているとも言えるでしょう。

特許申請の数は米中2強の激突

このレポートの後半はどの国家が人工知能=AIの特許に強いかというところ紙面を割いており、その議論は米国と中国の2強という構造に終始しています。

実際に中国によるAIの特許の申請数はこの数年で急増しており、米国のそれに追随あるいは上回るペースとなっております。

昨今、米国と中国との貿易摩擦や技術覇権の事象がニュースを賑わせてますが、このようなAIでの戦いも大きく貢献しているものと考えます。

最後に

上記に紹介したレポートではAIの活用による生産性の向上によってGDPをさらに押し上げることが可能になると主張しています。

そういう点では、AIは次の産業革命を主導する武器になるとも言えると思います。

その中での米国や中国の立ち位置、そして日本がどのように活躍できるか。

また、このレポートは本質的には特許のレポートですので、発明や開発についての議論が中心になるのですが、ただ実際にGDPに貢献するのは技術的なブレークスルーではなく、新しく出てきた開発済の技術をいかに広い産業に適用・活用するかということなのだと締めくくっています。

AIを使う我々のリテラシーが高まり、よりよい世界に導けると良いですね。

皆さんにとって何かしらの参考になれば幸いです。

コメント

タイトルとURLをコピーしました