この記事の内容
戦略提携の際に関係強化手段の1つとして使われる部分出資(マイノリティ出資)
マイノリティ出資(あるいは部分出資)という出資の形態は戦略提携の際に
「関係強化を目的として」
という名目の下に使われることが頻繁にあります。
出資比率としては多種多様ですが、拒否権を伴わない33%未満(海外のケースの場合25%未満ということも)という事例が一般的かと思います。
この記事ではマイノリティ出資という手段の妥当性について考察したいと思います。
全額出資に比べてローリスクというがはたして本当か
なぜマイノリティ出資にするのか。
それは多くの場合「リスクを下げたいから」という回答が多いと思います。
確かに、出資に必要な金額の多寡、上場会社を連結対象にすることによる他の株主との利益相反、実際の損益や貸借対照表への反映によって追う財務上のリスクを考えれば、このリスクが低いという評価は至極まっとうだと思います。
しかしながら敢えてこのリスクが低いという考え方をもう少し検証したいと思います。
それはマイノリティ出資が、協業先の経営リスクを負いながらもそれをコントロールできないという性格を持っているからです。
協業の実行と経営の出来不出来には関与できない仕組
マイノリティ出資それだけでは経営を完全にコントロールすることはできません。
たとえマイノリティ出資そのものが戦略的提携の手段だったとしても出資そのものだけではその提携をサポートできるかどうかわかりません。
提携に定められたアクションを実行するかどうかについてはマイノリティ出資だけではコントロールできないからです。
また協業先の経営リスク、たとえば赤字など、についてもコントロールができず結果のリスクだけは背負うことになります。
このようにマイノリティ出資はそれだけでは目的に対してコントロールができない上にリスクだけを吸い込むような仕組になっているのです。
すなわちマイノリティ出資がローリスクという表現は必ずしも正しくありません。
本当に必要なのは出資そのものではなく出資をテコにした契約
マイノリティ出資それだけでは戦略提携の目的をサポートできるかどうかわからず、リスクだけがのせられてしまうと説明しました。
ではどうすれば良いのでしょうか?
必要なことは出資を背景としてしっかりとした条件の契約を結ぶことです。
マイノリティ出資は提携の手段として用いられると述べました。しかしながら、出資による関係構築自体が戦略提携の実行を約束してくれるわけではありません。
出資比率に応じた影響力を契約内容に結びつけることが重要です。
すなわち、先にどのような契約を結びたいか、そしてその手段として出資が有効かどうかを論じなければなりません。
決して出資自体を目的化してはいけないのです。
最後に
マイノリティ出資を提携の手段として用いることは否定されるものではありません。
しかし、その提携を有効に実行するにはしっかりとした影響力を背景としてもたせることが必要です。
決して出資というディールの雰囲気に惑わされて目的を見失わないでください。
皆さんにとって何かしらの参考になれば幸いです。
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