この記事の内容
企業だけではない – 都市間の競争とは
通常、経営学の競争戦略を語る場合には企業を想定していることがほとんどです。
しかし、都市にも他の都市との間に競争があり、その競争に勝つための競争戦略があります。
実際に筆者はある都市の政府のために産業誘致戦略のコンサルティングを行ったことがあります。
その都市の規模に応じて競争する都市の範囲も変わってきます。
たとえば代表的な国際都市の場合には他国の首都なども競争相手となります。
一方、ある国の二線級の主要都市ということであれば、その他の二線級都市がその対象です。
さらには、その都市の規模によって競争の評価軸も変わってきます。
大都市の場合にはGDP、比較的小規模であれば人口や税収などです。
投資・差別化・収益性 – 都市に求められる経営戦略
競争戦略を策定し、実際に他の都市との競争に勝利するためには、企業と同じような経営の考え方や経営戦略が必要になってきます。
それは
「勝てる分野に投資を行って差別化を行いそこからリターンを得る」
という企業の経営と同じような考え方です。
ただし、企業と異なる点がいくつかあります。
- 立地自体が大きな経営資源: 企業であればどの国がホームグラウンドかという違いはありますが、立地そのものが差別化要因になることはあまりありません。
- 場合によっては外部資源も差別化要因: たとえば近接する都市の産業エコシステムは自分自身の資源ではありませんが、競争戦略には使えます。
- 産業ポートフォリオ間に想定外の相乗効果: 企業であれば事業Aと事業Bの相乗効果にはそれなりの論理的関係が成立しますが、都市の産業間のシナジーには、たとえば就業人口であったり可処分所得であったり大学等の高等教育インフラ等を経由して全く関係無い産業間のシナジーも有りえます。
いずれにせよ都市の発展にも経営戦略が必要です。
新型コロナで変異する産業像と都市像 – 求められる首長の見識
しかしながら都市の発展モデルは新型コロナ感染症の影響によって急変を来しています。
地理的に密集性の高い都市での生活は感染リスクの高さから忌避され、勤務・教育・医療のオンライン化によって必ずしも都市部にいることがアドバンテージにならないかもしれなくなってきているからです。
同様に産業の地理的属性についてもあいまいになって来ました。地理的なエコシステム自体の強固さが特徴になりません。
大事なことは都市の首長がこれらの変化を読み取って新しい競争戦略を導出することです。
首長の時代感や見識がより強く求められる時代になりました。
最後に
都市や自治体も旧態然した感覚ではなくグローバルな世界観の中で競争しているという感覚を持っていただきたいと思います。
日本の首長を見ているとあまりそのような感覚を持てませんが、世界に主要都市、特に成長中の経済圏の都市にはその感覚は強いように思います。
常に競争の中にいる。その意識を持っていたいものです。
皆さんにとって何かしらの参考になれば幸いです。
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