クロスセリングが想像ほど簡単ではない理由とその対策

経営戦略
Gerd AltmannによるPixabayからの画像

クロスセリングは最も一般的な協業提案

戦略的協業のアイデア出しを行っているとほぼ必ず「クロスセリング」のアイデアが出てきます。

これは非常に簡単に思いつくアイデアです。

「A社が持っている製品をB社の顧客に売る、B社の製品をA社の顧客に売る」というのが基本的な考え方です。

筆者が過去にリードしたプロジェクトやファシリテートしたプロジェクトにおいてこのクロスセリングアイデアは何度も何度も目にしました。

それくらいクロスセリングは一般的なアイデアです。

なぜクロスセリングは提案しやすいのか

なぜクロスセリングはこれほどまでに頻繁に出てくるのでしょうか。

それはお互いに持っているものと持っていないものを交換するという非常にわかりやすく、かつ価値が見えやすい提案だからです。

たとえばA社の営業人員は「B社の製品があればもっと売れるのにな」と思っているかもしれません。

A社の開発のメンバーは「B社のような顧客がいればもっと売れるのにな」と思っているかもしれません。

すなわち「ないものねだり」の感情に上手くはまるのがクロスセリングなのです。

クロスセリングの落とし穴

しかしながら同時に筆者はこの企業間のクロスセリングが上手くいった例をほとんどみたことがありません。

価値をイメージするのは簡単なこのクロスセリングですが、実際にワークさせるのは難しい協業提案です。

なぜクロスセリングの実行は難しいのでしょうか。

筆者が経験してきた中ではいくつかの要因があります。

クロスセリングが上手く行かない要因の例
  • サポートリソースが配備できない: 製品を売るためには製品があれば良いというものでもなく特に企業向けであればそのサポートも重要です。サポートのためのインフラ(ITなど)や知識や人員を協業のために配備することが必要であり、これはいきなりできるものではありません。
  • ビジネスプロセスの違いによって物事が動かない: 製品を1つ売るためにもビジネスプロセスが必要です。これが企業間で異なることによって、本来簡単にできていることも非常に困難だったりします。
  • 営業の製品知識が不十分: 製品を売るためには営業はその製品の特性(強み・弱み)を十分に理解する必要があります。これが新しくやってきた製品ではそれほど簡単にできるものではありません。

このように、さまざまな理由によってクロスセリングはイメージするのは簡単な協業提案ではあるものの実行は難しいものとなります。

失敗しないためのビジネスプロセスレビュー

では、クロスセリングのアイデアを失敗に終わらせずに実行するにはどのようにすれば良いのでしょうか。

それはビジネスプロセス全体にわたってレビューを行うことです。

すなわち、顧客に製品を提案し、顧客からの問合せに対して回答し、見積の発行や受注、納品と決済、品質保証やサポート、さらには商標権、知財権の確認、Web上等での表記の仕方、その他パートナー企業と問題の有無の確認などなど、多岐にわたって実際にビジネスを動かすための諸条件を明確にすることです。

これを実行前に確認して問題を潰せておけば、クロスセリングは絵に描いた餅ではなく実行に値するアイデアになるでしょう。

最後に

筆者は何度もクロスセリングのアイデアに直面し、何度も失敗の経験をしてきました。

協業において強みと弱みを交換するのは非常に良いアイデアです。

しかしながらその実行には周到な準備が必要なのです。

皆さんにとって何かしらの参考になれば幸いです。

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