コンサルティング実績

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株式会社アウトスタンドによるコンサルティングプロジェクトの実績をいくつか事例でご紹介します。お問い合わせについてはこちらからお願い致します。

事例1: グローバル企業による日本企業買収におけるブランド移行戦略

グローバル企業による日本企業買収におけるブランド移行戦略

課題: 買収後に日本企業ブランドを維持すべきか否か

クライント企業は日本企業を買収する直前のグローバル企業でした。本コンサルティングプロジェクトの課題設定は下記のようなものでした。

  1. グローバルブランドへの変更を行うべきか
  2. 変更するならばどのような時間軸・条件で行うか
  3. 変更しないならばその際の戦略はどうあるべきか

クライアント企業の問題意識は、グローバルな市場環境と比べてそもそも日本がユニークな市場であるという理解に沿ったものです。そのユニークさを乗り越えるための企業買収であったのでこの問題意識の設定は首尾一貫しています。

買収後の統合計画においてブランドを変更するべきか否か、その条件や計画の設定を支援したのが本プロジェクトの主題でした。

アプローチ: 事例検証および市場調査からの感応度分析

本プロジェクトに対しては過去事例からの主要論点の抽出と本案件への適用および市場調査による感応度分析を行いました。

過去事例からの主要論点の抽出: 主として参照したのは同じ産業で過去に同じようにグローバル企業が日本企業を買収した事例です。この事例においては日本企業のブランドを変更しないという選択をしました。これには2つの要因があります。1つは、そのグローバル企業の日本における知名度の低さ。もう1つは売却された企業の元親会社の意向です。後者の要因があったため、グローバル企業としてはブランド使用権の料率を低く抑えることができ、かつ、知名度が上がるまでの時間稼ぎができました。このブランド維持については時間限定の契約となっていました。

市場調査による感応度分析: 既に買収自体は発表されていたため、ニュースやビジネス誌で解説記事も既に発行されていました。まずはこのような記事から、市場やメディアがその買収自体をどのように受け止めているのか分析できます。ポジティブなのか、ネガティブなのか、あるいは中立的なのか。そのセンチメント分析を現状の知名度に付加することによって、今後どのような影響が起こりうるかのトレンド分析を行います。幸いにして、データが多く入手できる産業でしたので知名度分析はマーケットシェアやユーザーアンケートによって簡単に行うことができました。感応度分析の結果としては、市場センチメントは中立、しかしながら知名度の急落は免れないという結論でした。

成果: 初の「ブランド変更無し」方針を選択

結果としてクライアントは買収先の日本企業のブランドを変更しないという結論に至りました。この方針はこのグローバル企業が他の国で手掛けてきた他の企業買収の中でも初めての経験でした。

初めての意思決定をサポートするに資する材料を提供できたという点こそが本プロジェクトの最大の提供価値だったと思います。

事例2: 素材メーカーにおける中期計画策定時の業務プロセス設計

素材メーカーにおける中期計画策定時の業務プロセス設計

課題: 中長期の需要トレンド予測の精度を高めるには

クライアント企業はグローバルな素材メーカーでした。中期計画に用いる需要予測の精度が悪く、頻繁に見直しを行う必要があり、結果として中期計画が中期の時間軸では機能しないことが最大の問題意識でした。

主要論点としては下記のようなものでした。

  • 営業からのインプットを需要予測に用いてよいか
  • 営業からのインプットに依存しない場合は何を根拠に需要予測すれば良いか
  • それらのインプットを統合的に中期計画へ反映させるためにはどのような業務プロセスが必要か

中期計画に基づいて新製品開発の開発予算や生産工場の設備投資計画を設定するため、この需要精度の問題が直接的に経営の根幹課題となっていました。

当該企業は素材メーカーであるため最終需要の情報がサプライチェーン上のフィルターを幾重も通してインプットされるため検証が非常に困難という本質的な課題も包含していました。

アプローチ: 事例調査に基づく業務再設計

同じような課題を持つ企業は多く、それ故この課題に対するアプローチも多種多様で一様な解はありません。しかしながら他社のアプローチから必要かつ重要なエッセンスを抜き出すことは可能です。

本プロジェクトにおいて最も参考にしたのは電子部品メーカーの業務プロセスでした。電子部品もまた川下企業が何層にも重なるため需要予測が難しい、かつ研究開発費用比率が高い企業のため同様の課題を抱える企業でした。

事例研究から抽出したのは下記のようなポイントでした。

  • 営業からのインプットは「判明している需要」に対しては概ね有効
  • ただし営業からのインプットは「判明していない要素」例えば、技術の陳腐化・新規需要の発生・新製品の立ち上げ等など本質的なシナリオ変化に対応できない
  • 上記の要素を補完するためには別のインテリジェンスを具備することが必要
  • かつ、それらの現場からのインプットおよび市場をマクロにみたインテリジェンスを統合するための業務プロセスを組み上げる必要がある
  • さらにはそこから得られたズレの部分を再度プロセスに練り上げるためのフィードバックサイクルも必要

クライアント企業にはこのインテリジェンスによる補完機能が不在であり、業務プロセス設計が曖昧になっていたため、課題が大きく顕在化していました。プロジェクトとしての最大のタスクとしてこの補正を行う業務設計を行いました。

成果: 中期計画策定用の新規業務プロセス設計と導入

この新規業務プロセスのポイントは2点。

  • 営業からのインプットだけに依拠せず市場をマクロから観察するためのインテリジェンス機能の設置
  • 上記インテリジェンス機能からのアウトプットを中期計画に反映させるための業務プロセスの再構築

インテリジェンス機能の設置: シンプルに考えるなら新組織の設置ということになるのかもしれませんが、ここでは新組織の設置のオプションは落としました。一つはそもそも組織のアウトプットはスキルによってもたらされるものであり、組織形態ではないこと、もう一つは既存組織から遊離した組織を作っても市場に対する観察能力は高められないことが理由でした。このため、既存の事業部内のメンバーのタスクを更新するというアプローチを選択しました。

業務プロセスの再構築: スケジュール設定も含めて統合的にインプットをまとめるためのプロセスやテンプレート、データの定義などを明確化しました。新プロセスの習熟には少し時間が必要でしょうが、客観性は大いに向上しました。

事例3: 研究開発費比率が高い産業・企業における事業部組織の最適化

研究開発費比率が高い産業・企業における事業部組織の最適化

課題: 事業部組織の定義は製品軸か用途軸か

クライアント企業は化学系のメーカーでした。事業部制で収益を最適化したいと考えていましたが、その事業部の編成の軸を製品別とするか用途別とするかが課題認識でした。

製品別組織は製品開発が効率的ですが、独りよがりな製品企画あるいは複数の市場ニーズが混在した製品企画となり、市場のニーズを捕捉し切れないというリスクがあります。

他方、用途別組織は市場のニーズに最適化した製品企画を行えるというメリットがありますが、ともすると非常に規模の小さなニーズに対して経営資源を投入してしまうリスクが高まります。

これらのトレードオフをどのように見極めて、最適な組織設計を行うかが本プロジェクトの命題でした。

アプローチ: 競合企業との開発費比較による差別化戦略再精査

そもそも組織の最適化は競合企業との競争に勝利することが目的です。組織設計はその規模・陣形で競合企業に対して優位か否かを重視しなければなりません。

本プロジェクトではクライアント企業が製品を供給する主要市場における競合企業が各市場に投下する開発費を算定し、自社と比較することによって、そもそもの市場ニーズの理解の優劣の議論なのかそれ以前の議論なのかを明確化しました。

そもそもの戦力、すなわち開発費が競合の水準に全く及んでいない市場においてはその資源投下の是非から見直すことが必要になるわけです。

成果: 製品軸組織における用途別戦略構築

産業全体の中で中堅規模であったクライアント企業としてはまず開発費資源を集中化して競合とある程度比肩するレベルに到達することが必要です。

上記のアプローチの結果として、製品別組織を採択し、開発費の規模の最低レベルを確保することを優先させました。

他方、各製品別組織における主要用途については、各製品別組織の中での優先順位に従い、資源集中を図ることでより用途別戦略を先鋭化することができました。

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