この記事の内容
合併や買収時には買われた会社の従業員の心理をどうマネジメントするかが肝要
企業間の合併や買収すなわちM&Aの際には多くの従業員がそこに巻き込まれます。
突然他の会社と一緒になるわけですからその変化の大きさに対して不安になる人も多いでしょう。
多くの従業員に対してどのように接して彼ら彼女らからのコミットメントを引き出すかが経営者として必要なことになります。
その不安な心理に対してどのようにアドレスするかについて考えてみましょう。
個人によって反応は異なり、しかも表面上の反応だけではわからない
M&Aの際の従業員の反応を示すならば一般的には下記の図のようになります。
「これはチャンスだ」と捉えてはっきりと支持を示す人たち、そして「これはリスクだ」と捉えてはっきりと否定・反対の姿勢を示す人たちがいます。
しかしながらそのようにはっきりとした態度表明をする人たちはむしろ少数派であり、大多数は思っていることを表明しない人たちです。
経営層からするとはっきりと態度を見せる人たちの意見ばかりが目に留まりますが、本当に多い層は意見を表明しないことがほとんどなのです。
ポイントは中間層をどのようにコントロールするか
したがって人口動態としては最大派閥である中間層、いわば態度を表明しないが心の中ではポジティブだったりネガティブだったりと捉えている人たちをどのようにマネジメントするかが肝要になります。
この層は、はっきりとした態度表明をしないせいで周辺の意見に影響を受けやすい層でもあります。
逆にこの影響を受けやすい性質を上手く活用することが必要です。
買われた会社における「儀式」を上手く活用する
今回、特に心理面で注意をすべきは「買われた会社」の従業員です。
この被買収企業における文化が大きく変化する、もっと直接的な表現を用いれば蹂躙されたと感じたとき、そこにはネガティブな感情が芽生えます。
逆に旧来からある文化が尊重されたあるいはその文化の文脈の中でコミュニケーションが行われたとすればそれは融和を意味するのでポジティブに捉えられるでしょう。
それを上手く利用するのです。
被買収企業には、コミュニケーションの仕方(メールやホームページ)、会議の使い方など特徴的な儀式があるはずです。
それをそのまま使います。
もちろん時間が経つにつれてそれは廃れていくかもしれませんが、まずはそのコミュニケーションの儀式をそのまま使うことです。
それによって被買収企業の従業員は安心感を感じます。
そして仕事に向かうモチベーションも高まっていくでしょう。
最後に
筆者はM&Aの現場にて、この記事で示したベルカーブの反応を全て見ました。
強いポジティブな反応、強いネガティブな反応、そして心の中ではいろいろ思っていても示さない人たち。
これらの思いを間近で見ながらどのようにすれば上手く融合できるかを必死に悩んでいました。
今回の記事はその時の経験から紡ぎ出した考えです。
皆さんにとって何かしらの参考になれば幸いです。
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